治安を悪化させ、生活を不安に陥れている。実行役だけでなく、指示役や首謀者を含めた組織全体の実態を解明し、摘発するために警察は全力を挙げてほしい。

 犯罪の広域化が進んでいる。遠方で起きた事件であっても油断することなく、警戒を強めたい。

 首都圏で強盗事件が相次いでいる。警察当局は8月以降に4都県で起きた少なくとも七つの事件で「闇バイト」に応募した若者らが実行役を務めるなどの共通点があるとして調べている。複数人で押し入る手口なども共通している。

 ただ、首都圏で完結する事件ではなくなっている。埼玉県所沢市の住宅で80代夫婦を切り付け、現金を奪った現場から逃走した24歳の男は、柏崎市内で逮捕された。

 捜査関係者によると、男は実行役の一人で、所沢の事件後、仙台市や北海道を経て本県に入った。逃走中に2件の特殊詐欺事件にも関与したとみられている。

 所沢の事件では、男を含む4人が逮捕された。警察は4人が事件前に指示役から秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」を通じて集合場所を伝えられ、事件現場に向かったとみている。

 いずれも面識はなく、闇バイトで事件に関わったとみられる。

 闇バイトは、交流サイト(SNS)やインターネットの掲示板に、仕事の内容を明らかにせずに「高額報酬」を示唆するなどして、犯罪の実行役を募るものだ。

 SNSなどで緩やかにつながる「匿名・流動型犯罪グループ(匿流(トクリュウ))」は強盗や特殊詐欺など犯罪ごとに離合集散し、匿名性の高い通信手段を使う特徴がある。「ルフィ」らを名乗る指示役による広域強盗事件で注目が集まった。

 暴力団に比べ、指示役ら上位者の特定が難しい。実行役は使い捨てにされるのが実態だという。

 闇バイトに手を染めた若者らが「抜けたい」と思っても、犯人グループは、免許証などの個人情報を基に本人や家族に危害を加えると脅し、さらなる犯罪に加担させることがある。

 匿流による強盗被害者の中には、飛び込みのリフォーム業者を家に招き入れていた人もいた。その際に把握した資産状況を基に強盗が入った可能性もあるという。

 2024年版の警察白書は、匿流を治安上の「重大な脅威」と捉え、動向や対策をまとめた。

 併せて全国で4~6月に824人を摘発し、そのうち闇バイトを通じて関与したのは254人で全体の約3割を占めたと発表した。

 匿流対策では、都道府県や各部門の垣根を越えた警察の連携強化が急務だ。捜査などのデジタル技術向上にも努めてもらいたい。

 闇バイトの甘い文言で誘われた若者らが、犯罪の「捨て駒」にされた挙げ句、厳罰に処せられ、人生を棒に振ることがないように、啓発面の強化も欠かせない。