ラーメン王国の座を巡り、山形と新潟がしのぎを削っている。お隣同士の食対決が郷土愛や観光誘客にもつながれば、うれしい話だ

▼両県には、ラーメン以外の頂上対決もある。いまが旬のサトイモだ。都道府県庁所在市と政令指定都市の世帯家計調査で、年平均(2021~23年)の消費量は新潟市が日本一だった。年間2・5キロを超える。山形市は消費量で2位だが、消費金額は全国トップだ

▼新潟はのっぺ汁、山形は芋煮。代表的な郷土料理もサトイモが主役だから、サトイモ界の横綱同士が対戦するようなものか。東北・北陸地方では、生産量は本県が断然多い

▼本県の特産地としては「帛乙女」(きぬおとめ)のブランドで知られる五泉市が、まず挙げられるだろう。当地では10月の第2日曜を「さといもの日」と定めている。きょう13日には芋掘りがあり、早出川河川敷での芋煮会では大鍋で1200人分が用意される

▼「芋名月」は十五夜の異名である。サトイモを供えて月をめでた。東北や新潟では収穫期に合わせ、十三夜を芋名月と呼ぶこともある。ことしは今月15日だ。新発田市加治川地区には、新米とサトイモの炊き込みご飯などを「いも名月」と呼ぶ伝統が残っている

▼少し欠けた月を鑑賞する十三夜の月見は日本独特の風習という。五泉市の民俗研究家、駒形覐(さとし)さんは以前の本紙への寄稿で、稲作以前に伝来した根菜農耕文化の名残ではと推察していた。15日が月夜なら、サトイモとともに太古のロマンを味わうのはいかがですか。

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