三郎さんの好物だったそばを仏前に供え、感謝を伝える瀬沼専太郎さん、スイさん夫妻=10月23日、小千谷市
三郎さんの好物だったそばを仏前に供え、感謝を伝える瀬沼専太郎さん、スイさん夫妻=10月23日、小千谷市

 新潟県の中越地震2004年10月23日、新潟県中越地方を震源として発生した地震。旧川口町(現在の長岡市)で震度7、旧山古志村、旧小国町(いずれも現長岡市)、小千谷市で震度6強を観測した。新潟県や内閣府の資料によると、地震の影響で68人が亡くなり、4795人が重軽傷を負った。住宅の被害は計12万1604棟で、このうち全壊は3175棟、大規模半壊は2167棟、半壊は1万1643棟だった。で被災し、父の三郎さん=当時(89)=を亡くした小千谷市の瀬沼専太郎さん(82)は10月23日、自宅の仏前に三郎さんの好物だったそばを供えた。紙箱の製造会社を創業し、仕事熱心だった父。5人きょうだいを育て上げ、ひ孫もわが子のようにかわいがってくれた。「感謝しかない」。亡くなって20年たったこの日、遺影を見つめながら変わらない思いを改めて伝えた。

 地震が起きた当日、三郎さんや専太郎さんは幼いひ孫2人とともに近所の施設でそば打ち体験を楽しんだ。小千谷市東栄2の自宅に戻り、夕食の直前、すさまじい揺れに襲われた。家具は散乱し、自宅にあった仕事の機械はなぎ倒された。7人全員で軽乗用車に乗って避難した。

 道中、助手席にいた三郎さんの上半身がこくんと倒れ、意識を失った。すぐ病院に運んだが、亡くなっていた。ショック死だった。「箱屋をしていて、倒れた機械を見たのが相当ショックだったのか」と専太郎さんは推測する。

 三郎さんは穏やかで真面目な性格。酒も飲まず、趣味は俳句くらい。家業を専太郎さんに譲った後は、...

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