山に登った者だけが目にすることができる景色があるという。それを確かめたくて東京・国立競技場に乗り込んだ。アルビレックス新潟がJリーグ全60クラブの頂点を決める戦いに臨んだ
▼今季、松橋力蔵監督は「てっぺん」に挑むと宣言していた。リーグ戦では苦境が続くが、3大タイトルのYBCルヴァン・カップではトーナメントを勝ち進み、初のタイトルをかけて決勝に進出した
▼新潟はJ1では予算規模が最も小さいクラブの一つだ。バックに大企業が控えるわけではない。選手の獲得に潤沢な資金をつぎ込むことはできない。それでも技術と戦術を磨き、大きなクラブに一歩も引かない戦いを展開してきた
▼サポーターや地元スポンサーの後押しが支えだ。決勝前日の記者会見で、堀米悠斗主将は言った。「地域のみんなのために戦いたい」。新潟のサッカーやプロスポーツの未来も背負って試合に臨んだのだろう
▼名古屋との決勝は壮絶だった。常に先行された。巨大な岩に行く手を遮られるような苦しい展開でも、岩壁に爪を立て、歯を食いしばり追いついた。サポーターの合言葉は「アイシテルニイガタ」だ。新潟に愛され、新潟を愛してくれた選手らは延長戦を含め120分を互角に戦った
▼新潟のチームカラーのオレンジと名古屋の赤がスタンドを埋めた国立で、最後はPK戦に散った。初戴冠に指の先はかかった。しかし、この場で勝つと負けるとでは天と地ほどの差がある。いずれ、必ず-。この悔しさを忘れない。