1980年公開の映画「カリギュラ」は、ローマ帝国の第3代皇帝カリギュラの治世を描いている。ストーリーや描写の過激さが物議を醸し、上映が取りやめになった地域もあった
▼ところが、そのことで興味を持った人々が別の街の映画館に詰めかけた。このエピソードをきっかけに「カリギュラ効果」という言葉が生まれたという。ある行為を禁止されればされるほど、反対の行動に走りたくなる心理を指す
▼昔話にもそうした心持ちになった人々が登場する。玉手箱を開けてしまった浦島太郎しかり、娘に姿を変えたツルの機織りをこっそりとのぞき見た家人しかり。「開けてはなりません」「見ないで」の言葉がかえって真逆の欲をかきたてる
▼わが身にも心当たりがある。医師から禁酒を命じられると無性に飲みたくなる。ダイエットの反動で食べ過ぎるリバウンドもそうだ。しばらく好物を我慢した挙げ句、自ら課した禁を破ったことも一度や二度ではない
▼国際社会が自制を求めるほど、かたくなに戦闘の継続にこだわる。イスラエルのそんな振る舞いも、どこかカリギュラ効果と通じるものがあるのだろうか。国際社会の批判にまったく耳を貸さず、空爆を続ける姿はあまりに頑迷だ
▼カリギュラは暴君として歴史にその名を残した。親族を自殺に追い込み、有力者らが処刑された。現代のかの国は、ガザやレバノンで多くの犠牲を出してもなお攻撃の手を緩めようとしない。その行状は後世、どのように見なされるのだろう。