チュンチュンという声を聞くと、寝ぼけた頭でも朝が来たと分かる。ただ、そんな声を聞くことが少なくなったと感じていたら、本当にそうらしい。スズメが数を減らしていると言われて久しい
▼環境省が先ごろ発表した調査結果によると、里山や人里にいる鳥やチョウなど、身近な生物の個体数が急速に減っていた。スズメは1年当たりの減少率が3・6%だった。同省が絶滅危惧種と認定する際に基準とする減少率は3・5%だから、どきりとさせられた
▼かつては収穫期の田んぼにおびただしい数で飛来した。せっかく実ったコメが食べられるのだから農家はたまらない。害鳥としての側面があるが、一方で害虫を食べてくれる益鳥としての顔も持つ。いずれにせよ人との関わりが深い生き物だ
▼以前のように、ものすごい数の群れを見かけることは減った。ただ数羽で飛び回ったり餌をついばんだりする姿には時々出くわす。そうは言っても、今のペースで減り続ければ深刻な事態になる
▼今回の調査では森林や山地ではなく、農地や草原、湿地など開けた環境に生息する種の減少が目立った。里山の荒廃などさまざまな要因が考えられるが、人の営みが変化したことと関わりがあるのは間違いないだろう
▼スズメは古事記や枕草子に登場するほか、おとぎ話や童謡の題材にもなった。慣用句や家紋、着物の柄としてもおなじみだ。お隣さんのような小鳥には、今後もそばにいてもらいたい。あの声で目覚める朝はやはり爽やかだから。