詐欺被害を食い止めるには地域ぐるみの取り組みが大切だと痛感した。先日、糸魚川市内の特殊詐欺事件で容疑者逮捕につながったのは地名の読み間違いだった。タクシー会社に電話をかけてきた男は市内青海(おうみ)地区を「あおうみ」「おうめ」と発音した

▼地元の人なら間違わないはずだ。配車係は不審に思った。市内では前日、詐欺の前兆と疑われる電話があったと聞いていた。タクシー会社からの通報で、現金を受け取る「受け子」とみられる男が捕まった。息子を装った電話を受けた80代女性は200万円の被害を免れた

▼交流サイト(SNS)を通じた投資詐欺なども急増しており、糸魚川署は塗り絵で高齢者に防犯意識を高めてもらう取り組みを始めた。色鉛筆を持って手を動かし、楽しみながら詐欺防止を頭に刻み込んでもらおうという狙いだ

▼手書きの愛らしい塗り絵イラストは署の会計課職員が手がけた。日頃から職場のお知らせ文書にイラストを添えていたことから白羽の矢が立った。地元のB級グルメ「ブラック焼きそば」をPRするキャラクター「ブラック番長」らが注意喚起する

▼これに先立ち、幼児には交通ルールを伝える塗り絵を配った。完成した塗り絵は家に飾られたり、家庭内で話題になったりして、子どもたちが交通ルールを覚えるきっかけになるという

▼高齢者が孫と一緒に塗り絵を楽しみ、家族ぐるみで防犯や事故防止の意識を高める効果も期待される。みんなで取り組めば心強い。地域の力を高めたい。

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