先月の衆院選の際、投票所の記載台で鉛筆を手に「あれ?」と思った人もいるだろう。比例代表の政党名が列挙された張り紙を見ると、立憲民主党と国民民主党の略称は、いずれも「民主党」だった

▼本紙にも有権者の男性から疑問の声が寄せられた。「民主党」と書いた票はどうなるのか。投票所の職員に尋ねると、立民と国民とに案分されるという。男性は「これほど1票をばかにした話もない」と憤っていた

▼今回の衆院選で大きく勢力を伸ばした両党は、ルーツをたどれば同じ民主党だ。2009年から3年半、政権を握っていた。ともに国内最大の労働団体である連合の支援を受けているが、政策の違いなどからたもとを分かった

▼両党が同じ略称を届け出たのは今回が初めてではない。前回21年の衆院選では362万票余りが案分された。それでも同じ略称を使い続けている。有権者の戸惑いは届いていないのか

▼今回の衆院選で、この略称を記した有権者はどんな思いを抱いていたのだろう。意中の政党に入れたつもりの人もいれば、案分やむなしという人もいただろうか。いずれにせよ、自公政権に批判的だったことは間違いない

▼11日には特別国会が召集される。各党は衆院選で託された民意を、まずは首相指名という形で示すことになる。ただ、ここでも立民と国民の足並みはそろいそうにない。協力を模索する一方、互いに批判し合う声も聞こえてくる。略称を書いた有権者は、複雑な思いで見守っているかもしれない。

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