戦闘が激烈さを増し、おびただしい犠牲者が出ている。市民が残虐な戦争犯罪の標的にされ、罪のない人の命が奪われ続けている。

 過酷な状況に置かれた人々の尊厳を踏みにじる行為は一刻も早くやめなくてはならない。

 ロシアによるウクライナ侵攻の最激戦地となっている南東部の要衝マリウポリで、ロシア国防省がウクライナ側部隊に降伏を要求した。抵抗を続ければ部隊を全滅させると最後通告した。

 ロシアは総攻撃に踏み切る構えも見せており、戦況は重大な局面を迎えている。

 ウクライナ側は要求を拒否し、徹底抗戦を表明した。ゼレンスキー大統領は「われわれは領土や国民を取引対象としない」と述べ、部隊全滅なら交渉に終止符を打つと強調した。

 一方的に侵攻し、祖国を焦土にしたロシアの要求に応じる理由はないということだろう。そう主張するのは当然だ。

 深刻なのはマリウポリの被害だ。約1カ月半も包囲され、人口約43万人の街で市民の犠牲が2万1千人に上ると推定されている。

 キーウ(キエフ)州で1200人超、北部チェルニヒウ市で約700人(軍人含む)、東部ハリコフ州で500人超と発表された犠牲者数に比べて突出している。

 さらに市民に被害が及ぶ攻撃は断じて行ってはならない。

 マリウポリでは高齢者ら10万人以上が取り残されているが、バスが壊され避難の手段は乏しい。

 子どもも被害に遭っている。

 ウクライナはロシア側がマリウポリなどから12万人以上の子どもをロシア西部に強制的に連れ去ったと訴えている。

 ロシア語で「子ども(がいる)」と掲げていた劇場さえ空爆され死者は300人に上ったという。

 3月には産科小児科病院が爆撃され20人が死傷した。有効な警告や待避期限の設定がなく、欧州安保協力機構(OSCE)は明確な国際人道法違反だと認定した。

 女性が暴力の標的にされていることも見過ごすことはできない。

 キーウ周辺ではロシア軍撤退後、ロシア軍の兵士らによる女性への性的暴行の被害が相次いで報告された。同様の被害は各地で相次いで明らかになっている。

 紛争下の性暴力も国際人道法違反だ。蛮行を許してはならない。

 戦闘が継続している地域では把握が難しく、マリウポリの状況が強く懸念されている。

 オーストリアのネハンマー首相によると、ロシアのプーチン大統領は11日の会談で、侵攻を正当化する独自の戦争論理に浸る一方、「戦争が早く終わるのに越したことはない」とも話したという。

 自ら始めた戦争を人ごとのように語るのは理解に苦しむ。理不尽な犠牲を直視し、一日も早く停戦を実行すべきだ。