近年注目を集めるスポーツの一つがスラックラインだ。木の間などに渡した、細いベルトの上を渡る。バランス感覚や体幹の強さ、集中力が要求される

▼単に渡るだけでなく、ベルト上でさまざまなポーズを取ったり、ベルトの弾力を利用してトランポリンのようにジャンプしたり、楽しみ方は多彩だ。レクリエーションから本格的な競技まで、本県でも愛好家は多い

▼源流は綱渡りだろう。スラックラインは誰もが楽しめるよう安全性に配慮したスポーツであるのに対し、綱渡りは曲芸として発展した。落下して命を落とすリスクを伴うこともある。それゆえ危険を冒し、冷や汗を流しながら何かをなすことの例えとしても使われる

▼衆院選の結果を受け、きのう第2次内閣が発足した石破政権がそうだろう。自民・公明両党の議席は過半数に届かず、衆院の首相指名は決選投票に持ち込まれた。最終的には石破茂さんが最多得票で首相に選ばれたが、過半数の票を得ることはできずに少数与党となった

▼与党だけでは予算案や重要法案は通せない。野党は自らの主張を通そうと手ぐすね引く。与党内にも「政治とカネ」の問題への不満が澱(おり)のようにたまっているらしい。石破政権を取り巻く環境は、内憂外患のような様相である

▼ただ、この政治状況は衆院選で示された民意がもたらしたものだ。有権者は、与野党がしっかりと政策協議をすることを望んだといえる。綱の上の政権はいかにバランスをとるのか、それとも足を滑らせるのか。

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