就職活動の早期化に拍車がかかり、学業と両立できるのか。学生が不安を抱くことのないルールにしなければならない。
経団連と大学側でつくる産学協議会は、インターンシップ(就業体験)での評価といった学生の情報を採用選考で活用できるようにすることで合意した。
2024年度卒の学生からの適用を目指す。
インターンは3年生の夏から本格化する。政府が定めた現在の就活ルールは、会社説明会を3年生の3月、面接などの選考を4年生の6月に始めるよう求めている。内定は10月以降としている。
政府はこれまで、「インターンで取得した学生情報は基本的に採用選考に使用できない」としてきた。今回、協議会の要請を受け入れ、方針の見直しを決めた。
背景にあるのがインターン制度の形骸化だ。
学生にとってインターンは、就活に先立ち、仕事の体験を通じて自らの適正を見極める貴重な機会になっている。
一方企業側は、実質的に早期選考の場として活用しているのが実態だとされる。
外資系企業はインターンを積極的に活用し、国内企業より早く学生に内定を出す例が多い。国内企業もインターン時の情報を採用の参考にしているとみられる。
協議会の合意はこうした現状を追認した形だ。
人手不足が深刻化する中、優秀な人材を獲得するために早く学生を囲い込みたいという傾向が強まっている。
政府はルールの見直しへ議論を始める方針だが、懸念も募る。
インターンが事実上の就活開始と位置付けられ、学生は早ければ2年生から説明会や選考の準備に追われることになりかねない。
勉強や部活動などのためインターンに参加できなければ、不利になると心配する学生もいる。
インターンの開始時期を遅らせるなど、公平で学業に支障が出ないルールが不可欠だ。
感染禍からの経済回復を見込み、採用抑制を転換させる企業が増えている。行き過ぎた採用競争を招いてはならない。
協議会は企業がインターン情報を活用できる条件として、学生が参加する期間の半分超を実際の職場での就業体験とすることなども定めた。本来のインターンの趣旨から外れないようにするためだとしている。
企業は学生の成長につながるプログラムの提供に努めてほしい。
若者の流出が続く本県では、学生の地元就職を促す一つとして、企業のインターン受け入れを支援する自治体が少なくない。
行政と企業、大学がしっかり連携し、充実したインターン制度を構築することで、県内で働く魅力を若い世代に発信していきたい。
