近ごろは大人物が現れず、真と偽が逆さまになり、宝と石が交ざるといったありさまで、なんとも嘆かわしい-。3~4世紀の中国の思想家、葛洪(かっこう)は著書でこう言った。「玉石混交」の由来とされる

▼現代の交流サイト(SNS)のことを評しているようでもある。役に立つ知識や新たな発見に出合うこともあれば、デマや誹謗(ひぼう)中傷が流れてくることも。まさに玉石混交の情報が飛び交うのがSNSの世界だ

▼一方で、既存メディアへの不信を強めている人々もいる。米大統領選でのトランプ氏の勝利は、ジャーナリストの報道を「フェイクニュース」と決めつける主張に同調した人がかなりの数に上ったことを物語る

▼おとといの兵庫県知事選では、パワハラなどの疑惑告発文書問題で知事の座を失った斎藤元彦氏が再選を果たした。返り咲きの大きな原動力になったのがSNSだ。「パワハラはなかった」と断じる声すら広がった

▼選挙戦のさなか、わがスマホにもこうした主張が届くことがあった。どんなものかと読んでいると、次第に似たような投稿を目にする機会が増えた。同じような興味や価値観の投稿を、より多く表示する機能らしい。そんな環境に身を置くと、反対側の意見に触れる機会がどんどん減ってくる

▼SNSにこそ真実があるという陰謀論めいた主張も見かけた。対立候補に関する偽情報も出回ったらしい。SNSが押し上げた斎藤氏が、どんな姿勢で県政に臨むのかを注視したい。パワハラなどの検証も続けねば。

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