冬の訪れを実感する。空は鈍(にび)色。風の音は寒々しく、ガラス窓の結露がうっとうしい。そんな時季をめがけて公表したわけではないだろうが、国立社会保障・人口問題研究所の推計にしんみりさせられた
▼2050年に全国の1人暮らし世帯の割合が44・3%に増えるという。5世帯に1世帯は65歳以上の単身世帯になるそうだ。本県も傾向はほぼ同じ。配偶者との死別や未婚の人が増えるためだという。「孤の社会」とも言えるのか
▼気になる数字がほかにある。本年版高齢社会白書に高齢者層の実態調査が載っている。親しい友人らが「たくさん」または「普通に」いると答えた人は、5年前より20ポイント以上減って過半数を割った。人と話をする頻度が1週間に1回以下だという独居者は約13%。5年で3倍以上に増えた
▼「結局、人間は1人なんですよ。1人で生まれて、やがて1人で死んでいく」とテレビで語っていたのは瀬戸内寂聴さんだった。最初から人間は孤独なものだと思っていれば、ひとりぼっちになってもうろたえなくて済むと軽やかに説いていた
▼さはさりながら。やすやすと達観できるはずもない。たとえ1人暮らしになっても、たわいない愚痴や冗談を言い合える存在が身近にいてほしい。何年たっても飽きもせず、同じ昔話で大笑いしてしまうような仲間を大切にしたい
▼社会の仕組みとしてのセーフティーネットはもちろん大切だが、人とのつながりは一人一人が平凡な日々の積み重ねの中で培っていくほかない。