実りの秋ならではの悩みだろうか。各地で催される産業祭や収穫祭を訪れるとおいしいものが並び、どれを求めようか、迷ってしまう

▼先日は、伝統野菜である赤カブの漬物をお目当てに村上市の山北地区へ出かけた。焼き畑農法で育てる赤カブが本紙で紹介され、気になっていた。酷暑の時季に山の斜面に火を入れ、雑草や害虫を駆除する。灰は養分になる

▼生産する板垣喜美男さん(68)によると、赤カブは寒くなると実が大きくなる。今年は暑さが長引き、収穫が少し遅れたが、いい出来になったという。ピリッとした辛みのある酢漬けは晩酌によく合った

▼農林水産省のウェブサイトに「うちの郷土料理」というコーナーがあり、この赤カブをはじめ、各都道府県の料理を紹介している。本県は魚沼の「きりざい」や佐渡の「いごねり」といった30種が登場する。郷土料理を次世代につなぎ、食育にも役立てたいという

▼2023年度の食育白書によると、月に1日以上、郷土料理や伝統料理を食べる人の割合は54・5%と目標の50%を上回る。ただ、その頻度は月に1~3日との回答が半数以上で、さほど頻繁とはいえないようだ

▼郷土の味に親しむには、身近な所で食材に出合えることが大事だろう。山北地区のお祭りではカブ漬けのレシピもいただいたので、試してみた。板垣さんの味には及ばないものの、乙な感じに仕上がった。本県は直売所もあちこちにあり、季節ごとの食材が手に入る。恵まれた環境に感謝して味わいたい。

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