ここ数日、本県などに荒天をもたらした要因の一つは「寒冷渦」と呼ばれる気象現象である。寒冷低気圧ともいう。上空に寒気を伴った低気圧のことだ

▼日本付近の偏西風が南側に蛇行し、その部分が極端に発達すると、本体からちぎれて渦のようになる。渦には偏西風の北側にあった冷たい空気が閉じ込められるため、強い寒気をもたらす。本県も大気の状態が不安定になり、大雨や強風、雷に見舞われた

▼外を歩くと風に足を取られそうになった。渦や強風に巻き込まれると思わぬ方向に流されるかもしれない。ふと連想した。国際社会にもそんな流れが生まれようとしている。出どころは米国、言わずと知れたトランプ次期大統領だ

▼来年1月の大統領就任を前に中国、メキシコ、カナダの3カ国に対する関税強化の方針を打ち出した。影響は、この3カ国にとどまらないだろう。ほかにもウクライナや中東での戦闘や、地球温暖化問題など多くの分野でトランプ流の強風が吹きそうだ

▼米国第一を掲げ、国際協調にはさほど興味がなさそうなご仁である。ドイツのメルケル前首相は回顧録で、前回の大統領時代のトランプ氏を「全ての国が競争相手で、共存共栄を信じていない」と振り返っている

▼メルケル氏といえば、2018年のG7サミットで唯我独尊の姿勢を崩さないトランプ氏に、まるでお説教でもするように語りかけていた姿を思い出す。今の国際社会はトランプ流の大渦にどう向き合うのか。流されるだけでは情けない。

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