「一年の計は元旦にあり」。「元日にあり」とも言うようだ。初詣で家内安全を祈り、初夢で今年の運勢を占う。1月1日は初尽くしだから、この言葉に異存はない
▼だが実際、一年の計は今ごろ、師走の初旬に決まるとも言えないか。なぜなら来年1年をつかさどる手帳やカレンダーの売り場が最もにぎわう時期だから。来年の日程をにらみ、あれこれ計画を立てる人がいる。12月1日は「手帳の日」、3日は「カレンダーの日」という
▼予定を書き込んだりシールで飾ったりしてオリジナル感を楽しむ人もいるだろう。一方、紙の製品に別れを告げ、使うのはスマホの日程管理アプリだけという方も若者を中心に増えている
▼先日このアプリでひと苦労した。職場のスマホが一斉に更新された。筆者はパソコンやスマホの扱いには、とびきり疎い。同僚に手伝ってもらい、電話帳や写真データなどの引っ越しはできた
▼ところが手順を間違えたためか、手帳代わりの日程管理アプリのデータが引き継げない。会合や出張、懇親会、その時々の一言メモ…。日記のような思い出の記録が閲覧できなくなった。結局、忘れてはならない行事や今後の日程を厳選し、泣きそうな面持ちで手入力した
▼長年胸ポケットにあった紙の手帳は、だんだん使わなくなっている。今はスマホに予定を話せば自動で記録される。便利な機能は日進月歩だ。でも紙の手帳や暦のぬくもりや、下手な字の記録も捨てがたい。少し複雑な思いで一年の計を案じている。