「上品ドライバー」というテレビ番組が1990年代にあった。上品でマナーの良い車の運転技術や知識を紹介するコメディードラマだ。「お先にどうぞ ありがとう」の精神が強調されていた

▼個人的な印象だが、東京は上品ドライバーが多いと思う。車線変更でウインカーを出せば大体譲ってくれるし、道路の合流地点では交互に譲り合うマナーが守られている。交通量の激しい道路でトラブルを避けるための都会人の知恵なのだろう

▼本県はどうか。車線変更や合流で譲ってもらえないことはよくある。信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているときに一時停止するかどうかを日本自動車連盟(JAF)が調べたところ、県内で停止した車は昨年、わずか23%で全国最下位だった

▼県警の啓発活動などもあって今年は49%、29位に改善したが、なお2台に1台にとどまる。1位の長野県の87%にはほど遠い。ちなみに自転車のヘルメット着用率も本県は昨年が最下位、今年は44位だ。県民にはもっと上品な運転が求められる

▼上品な運転ならぬ政権運営が求められるのは石破茂首相だ。衆院選大敗で少数与党に転じ、何ごとも野党との協議が必要になった。自民1強時代の政権にしばしば見られた「暴走」はもはやできない

▼米国では、上品と言えない言動が目立つトランプ氏が大統領選に勝利した。いばらの道を首相はどう行くか。周囲を驚かす急な発進や車線変更は控え、丁寧に、丁寧に、理解を得ながら進んでもらいたい。

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