「辰巳(たつみ)天井」という株式相場の格言がある。辰年や巳年は株価が上昇するという。ことしは辰年だ。大きな下げもあったが、総じて昨年より高水準で推移しているようだ。日経平均が4万円の大台を超えることもあった

▼「精選版 日本国語大辞典」によると、株式市場で10円を単位とする値段の区切りを「台」というのに対し、100円単位を「大台」と呼んだ。近ごろは千円や1万円を単位とする。株価に限らず、大きな節目を表すことも多い

▼気になる大台がある。本県の10月1日現在の推計人口が戦後初めて210万人を割り込んだ。2008年に240万人を割り、15年に230万人、20年に220万人を下回った。200万人の大台を割る日が近づいているのか

▼人口減のペースは加速しており、Xデーは近いのかもしれない。ピークだった1997年には249万人を超えていた。この間の減り方は空恐ろしいほどだ。社会機能をどう維持するかという重い課題が目の前に横たわる

▼医療機関や学校は統廃合などの再編が避けられない。公共交通は運転手らの人員不足で、バス路線が廃止や休止になるケースが目立ってきた。今後も働き手の不足などで維持していけなくなる業種が現れるのだろう

▼私たちはこれまで、曲がりなりにも便利で豊かな生活を享受してきた。人口減が進むにしても、この社会のバトンを次世代に渡さねばなるまい。発想の転換や、新たな工夫も必要だろう。それを考えることは未来への責任のはずだ。

朗読日報抄とは?