天気予報に雪だるまのマークが並び、街中はマフラーや厚手の上着が目立ち始めた。ウイルス禍でご無沙汰していた忘年会で、鍋を囲む光景も増えただろうか
▼豆腐や肉、キノコや魚…。さまざまな具材を盛り込んだ寄せ鍋をワイワイ楽しむ。鍋料理は家族や仲間との「共食」が多い。だんらんの象徴だ。一方で生活は多様化し、高齢化も進む。一人鍋を楽しむ「おひとりさま」も増えている
▼厚生労働省の2023年の国民健康・栄養調査では過去1年間に地域で共食する機会があった20歳以上の割合は19%だった。家庭や職場、学校での食事は除いた数値という。祭りや近所づきあいが減る時代、約2割という結果に驚きはない
▼国は、32年度までに地域で共食する割合を3割に増やす目標を掲げる。1人での「孤食」ばかりでは、栄養バランスや心の健康を確保しにくいという考えが背景にあるのかもしれない
▼ただ、必ずしも共食が望ましいとは限らない。強固な関係を押しつけられるのは息苦しいことだってある。京都大の藤原辰史准教授は著書で、共食とも孤食とも異なり、ゆるやかにつながる「縁食」というスタイルを提唱している
▼一例として全国に9000カ所以上に広がった「子ども食堂」を挙げた。困難を抱える家庭の食事を支えるだけでなく、多様な人々のつながりが生まれる。新潟市発祥とされる「地域の茶の間」も同様だろう。思わぬ縁で結ばれた居心地いい食の空間が、人口減少時代には地域の宝になりそうだ。