「政治とカネ」の問題を繰り返さないための改革でなくてはならない。腐敗の温床となる「抜け穴」を残さず、透明性を高める仕組みの構築へ熟議を求めたい。

 国会で自民党派閥裏金事件を受けた政治資金規正法の再改正を巡る法案の論議が本格化し、政治改革特別委員会で与野党が法案について意見を表明している。

 石破茂首相は臨時国会中の法案成立を目指すとしているが、主要論点で各党の立場に隔たりがあり、合意を得るのは容易ではない。与野党の中で「延長不可避だ」との声も上がり、成立するかどうか、見通せない。

 政党から幹部に渡し切りで、使途公開不要な政策活動費は、廃止の方向で与野党が一致する。

 自民の法案には廃止と併せて使途を非公開にできる「公開方法工夫支出」新設が盛られている。

 外交上の秘密や企業の営業秘密、有識者のプライバシーを害する恐れがある場合など限定的な支出を念頭に置いているという。

 首相は11日の衆院予算委員会で、工夫支出の領収書は公開せず、支出の上限額もないと述べた。

 しかし、例外を設ければ、使途不明なカネが残る可能性があり、廃止との整合性が問われる。

 党内からも「透明化の観点で理解は得られない」との意見があった。野党が「政策活動費を差し替えて温存するだけだ」などと批判するのは当然だ。

 支出をチェックするための第三者機関も論点になる。

 自民の法案は、「政治資金委員会」を設けて、非公開支出を監査し、結果を公表する仕組みだ。

 公明党は国民民主党と、「政治資金監視委員会」を置く法案を共同提出した。対象を非公開支出ではなく、国会議員の政治団体の収支全般としている点が自民案と違う。調査や是正を求める権限も与える方向だ。

 与党の公明が、自民抜きで野党と法案を共同提出するのは異例だ。自民案では踏み込み不足ということだろう。

 焦点となる企業・団体献金を巡っても、各党の主張には大きな開きがある。

 自民は存続の立場を堅持している。首相は「献金で政策がゆがめられたとの記憶はない」と述べ、強気な姿勢だ。

 立憲民主党は会社や労働組合による寄付と政治資金パーティー券購入の禁止を求める一方、企業が自由意思で結成した政治団体の寄付までは禁じていない。

 国民民主や日本維新の会は、立民案が禁止対象から政治団体を除いている点を「抜け穴がある」とし、共同提出に加わらなかった。共産党は全面禁止を訴える。

 政治への信頼を取り戻すにはどうあるべきか。有権者の目線に立ち、国会は抜本的な政治改革に取り組まねばならない。