
長野県境に近い新潟県妙高市の妙高高原エリアで地価が上昇に転じた。価格そのものは都市部に及ばないが、2024年基準地価(住宅地)の伸び率は妙高市関川が新潟県内トップだった。背景には、外資系不動産投資ファンド「ペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)」の大規模リゾート計画がある。これを商機とみて土地建物の取引も活発化。不動産価格の上昇は続くとみられ、関係者は「バブル」と表現する。PCGの投資計画が明らかになって1年。妙高のスノーリゾート地に近づく「バブルの足音」を現場で聞いた。(上越支社・小林純、小澤楓花)(4回続きの4)
- <1>妙高高原エリアの地価上昇!ビジネスチャンス求め不動産取引も活発化
- <2>大規模リゾート計画の波及効果続々!地元内装業者の受注急増、移住者増にも期待
- <3>進む高齢化、跡継ぎは見つからず… 思い入れのある宿の売却決断
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笹ケ峰高原など自然豊かな妙高市杉野沢地区には民宿が建ち並ぶ。外資系不動産投資ファンド「ペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)」が近隣の妙高杉ノ原スキー場周辺で進める大型リゾート計画の盛り上がりを横目に、民宿「富士美荘」を営む鴨井茂人さん(61)はつぶやいた。「リゾートがオープンしたら、営業をやめざるをえないかもしれない」
主な顧客は妙高杉ノ原スキー場の利用者だ。北海道ニセコ町などの世界の富裕層が集うようになったスノーリゾート地から、比較的安価で楽しめる妙高に切り替えてきた人も多い。「妙高杉ノ原スキー場が高級リゾートに変わり、リフト券などが高くなれば今までの利用者は離れていくだろう。安く楽しめる他地域のスキー場に流れてしまうのではないか」と、鴨井さんは強い危機感を抱いている。

地価が急騰すれば固定資産税の上昇にもつながる。利用客が減る上に負担だけが増すようでは「経営はたちまち立ち行かなくなる。閉業するか事業規模の縮小は避けられない」という。
▽急激な環境変化への対応模索
スキーが冬の人気レジャーだった1990年代、杉野沢地区には民宿などの宿泊施設が100軒以上あった。現在は、高齢化などにより30軒ほどにまで減った。鴨井さんは「今回の開発は、減少に追い打ちをかけるようなもの。何かメリットがあるとは思えない」と危惧する。

鴨井さんには、もう一つ懸念がある。今後さらに増える可能性がある外国人居住者との関係だ。地元町内会でも話題になっていると話し、副区長を務める鴨井さんは「文化の違いから、ごみの分別や路上駐車などを巡り、既に住んでいる外国人とトラブルが起きている」とため息をつく。
そのため町内会では、ごみの分別などのルールを示した契約書類の導入を検討。急激な環境変化への対応を模索している。
▽相乗効果が得られる関係作りを
リゾート施設と地元とが共生するためには、どうすればよいか。...