かつては生まれ月にかかわらず、年を越すと皆一斉に年齢が加算される数え年が一般的だったから、年越しの重みは今より一層あったのだろう。大みそかや正月のごちそうは、無事に年を取ることへの感謝が込められていた
▼「年取り魚」は、そんなごちそうを象徴する存在だ。この季節に水揚げされる魚のうち大型で見栄えのするものが好まれた。「東の鮭、西のブリ」とよく言われる。東西の境界は本県を走るフォッサマグナ周辺だ
▼鮭は北の海で大きく育ち、生まれた川に帰ってくる。ブリは育つに従って呼び名が変わる出世魚である。いずれも縁起が良く、味わいも抜群だから年取り魚にふさわしい。ところが本県では共に、このところ不漁が続いていると本紙が伝えていた
▼今シーズンの鮭の漁獲量は河川と海を合わせて約2万8500匹。前年同期に比べ37%減だ。2015年度には約46万9千匹だったというから、何とも厳しい。放流する稚魚が不足する恐れもあり、これまた先行きが不安になる
▼漁期が続いている寒ブリは富山や福井で豊漁に沸く一方、本県では調子が上がっていない。佐渡の両津湾では一冬で1千トン揚がった年もあったが、昨冬は100トンほどだった。丸々とした魚が市場にずらりと並ぶ風景はなかなか見られない
▼日本の東西が出合う場所である本県には、食をはじめ多様で豊かな文化が息づく。地球環境の変化はあるにせよ、海の恵みを守る手だてはないものか。豊漁の祈りが天に届いてほしいのだが。