曇天から冷たい雨が降る日。「日本海側の暮らしが長かったので今日のような空模様は非常に懐かしい」。講演はそんな言葉から始まった
▼毎年外部から講師を呼ぶ糸魚川市議会の研修会に先日、元鳥取県知事で現在は大学特任教授の片山善博さんが招かれた。知事を務めたのは2期8年。自治省(当時)入庁後の20代の頃に鳥取県の課長に出向し、秋田県の海側のまちでは税務署長に就いたという
▼地方自治の論客として知られる。2010~11年には総務相を務めた。小規模な会に足を運ぶのは意外な気もしたが「議員と接触する機会を大切にしたいと思い、実践している」と語った。議会と住民との距離はなぜ縮まらないのか、各地で深刻な議員のなり手不足、地方創生にどう向き合うか…話題は多岐にわたった
▼自治体にとって議会は重要な存在である一方、変革も求められる。必要なのは執行部が出した議案や予算案を決定する前に市民の声を聞き、地域本位で考えること-。そんな趣旨だった。「出てきた案を通すだけなら議会はいらないでしょう」。議員にとって耳の痛い話のはずだが、うなずく姿が多かった
▼「異論、反論を歓迎します」と質問を受け付けた。司会が「そろそろ時間なので…」と打ち切ろうとしたところ「まだいいですよ」とさらりと言った。研修会は予定された時間を1時間超えた
▼来年も各地を巡るのだろう。地方議員の心に一石を投じ、議会活性化への種をまく。そうした姿に、こちらも刺激を受けた。