鳥が人工物に衝突することで起こる事故がバードストライクだ。きのう韓国で起きた航空機事故の原因として取り沙汰された。同種のケースとして、多くの人が思い浮かべるのは2009年1月に米ニューヨークで起きた不時着事故だろう

▼米国の旅客機が離陸直後、大型の鳥の群れに突っ込み、エンジンが推進力を失って失速した。市内を流れるハドソン川に不時着したが、日本人を含む乗客・乗員の全員が生還することに成功した

▼現場はマンハッタン中心部のタイムズスクエアから2キロほどの地点だった。極寒の状況下、川の中での救出作業となり、一歩間違えば大惨事になるところだった。劇的な生還は「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、映画化もされてヒットした

▼それに比べ、今回の事故はあまりに残酷な結末となった。暗たんたる思いに包まれる。世界の空港では、バードストライクの対策が講じられている。今回の事故原因の詳細は今後の調査を待たねばならないが、鳥との衝突が関係しているのなら、さらに徹底した対策につなげる必要がある

▼年末年始の航空機事故といえば、ことし1月2日に羽田空港で起きた、日航機と海上保安庁機の衝突を思い出さずにはいられない。こちらは人的なミスが指摘されている。空の安全を揺るがす事態に、慄然(りつぜん)とさせられた

▼多くの人が空港を行き交う時季である。懐かしい顔と再会したり、長めの休暇を楽しんだり。ターミナルには笑顔が似合う。心から笑える空の旅を取り戻さねば。

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