ことしは巳(み)年。ヘビは手足のない姿が気味悪がられて忌み嫌われる一方で、脱皮を繰り返し「再生」をイメージさせることから繁栄の象徴でもある

▼恐ろしく、かつ畏れ敬うべきものとして扱われてきた。水害を起こす河川は荒れ狂う大蛇に例えられた。昔話や民話にもよく登場する。まか不思議な霊力を持つ、まがまがしい存在として描かれることが多い

▼そんな中で、長岡市小国地域に伝わる話に出てくるヘビは少し間が抜けており、かつ気立てが良くて善良だ。冬が近づいたある日、山にたき木を採りに行ったおじいさんは、足に何かが絡みついているのに気づいた。縄切れかと思ったらヘビである

▼どうやら冬ごもりし損ねたようだ。おじいさんは家に連れ帰って冬を越させてやった。春になって山に帰ったヘビはお礼にと赤い巾着を持ってきた。その巾着は、願い事を何でもかなえてくれて…

▼馬場英子著「語りによる越後小国のむかし話」に収められた「蛇のくれた赤い巾着」である。まだまだ話は続くのだが、冬眠しそびれるとは愛きょうのあるヘビである。この話に登場する人や生き物は多くがお人よしでユーモラス。こちらの心をほっこりさせてくれる

▼昔話には何らかの教訓が含まれることが多い。この話からは、少々のことにくよくよせず、機嫌よく生きることの大切さが伝わってくる。ため息をついたり、イライラしたりすることの多い世相ではあるけれど、努めて機嫌よく振る舞いたい。笑顔は笑顔を呼ぶと信じる。

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