〈祭りのあとの淋(さみ)しさが いやでもやってくるのなら…〉と歌い出す吉田拓郎さんの名曲「祭りのあと」は、1972年に発表された。童謡「赤とんぼ」をハーモニカで演奏する冒頭部分が印象的だ
▼歌詞は学生運動の屈折または失恋の婉曲(えんきょく)表現ともとれるが、実のところ、作詞した岡本おさみさんが大切な人への弔意を込めた歌であるようだ。詞の真意はさておき、長い連休を終えた今、その曲が頭の中をぐるぐる回っている
▼小さな家の中を年末から占拠していたキャリーバッグが一つなくなり、二つなくなり、ついに三つともなくなった。帰省していた子どもたちが各自の生活の場に戻っていくと、がらんとした空間だけが残った
▼子どもに巣立たれた親にとって、年末年始はひとときの祭りだった。帰省したといっても、まだ若い年代は友人と出かけてばかりだが、ようやく家族が顔をそろえた食卓で酌み交わす酒は妙に進んだ。図らずも飲み過ぎた
▼小さな孫たちによる喧噪(けんそう)が去り、ぐったりしている人もいるだろうか。のんびりする余裕もなく働き通した人も、勉強に明け暮れた受験生もいる。昨年の元日を地震に襲われ、忌まわしい記憶を上書きできないまま迎えた新年もあることに思いを巡らせる
▼松の内は過ぎ、それぞれの暮らしにそれぞれの日常が戻った。うまく気持ちをリセットできたらいい。まずは大雪も予想される厳冬期をしのごう。気を引き締めたい。年度末に向け、今やるべき課題に一つ一つ取り組んでいこう。