本紙窓欄に度々投稿してくださる新潟市の土田和子さんは97歳。いつも快活な文面に楽しませてもらう。昨年末には1年を回顧し「大吉の年だったと思うことにしよう」とつづる投稿があった

▼能登半島地震で幕を開けた昨年だが、発生翌日におみくじで大吉を引いたという。隣人に親切を受けたり、知人らとの食事会を楽しんだりする日々だったが、夏に体調を崩し、そのまま施設に入った

▼自宅での暮らしを断念するのは重い決断である。けれど原稿の筆致は明るい。「施設の生活は快適」「スタッフが親切で誠実」「食事が美味」。そして年初のおみくじに思いを巡らせ、冒頭の一言につながる。敬服する

▼再就職支援の大手「パソナキャリア」で社長を務めた渡辺尚さんは、カウンセラーとして5千人以上のビジネスマンと面談して見いだした法則を、月刊誌で挙げていた。人生の成否を分けるのは、その人が普段口にしている言葉であろうと

▼感謝などを伝えるプラス言葉と不満や愚痴を並べるマイナス言葉と、どちらがどう作用するか察しがつくだろう。渡辺さんは「人間は普段思っているとおり、発している言葉どおりの人生を送るといっていい」「人生や仕事を幸せに導く第一歩は言葉を変えること」と説いていた

▼初詣のおみくじに一喜一憂した人も多いのでは。仮に「凶」でも、希少価値はある。殊勝さや注意深さを心がけるきっかけになるなら、幸運なのかもしれない。土田さん、そんなふうに考えればいいでしょうか。

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