米菓業界の有力企業として、納得のいく説明が不可欠だろう。

 三幸製菓(新潟市北区)は5月中旬以降の生産再開と、6月ごろからの出荷・販売を行う予定をホームページで発表した。

 2月に荒川工場(村上市長政)で6人が死亡、1人が負傷する火災を起こした。これを受け、同工場と新崎工場(新潟市北区)、新発田工場(新発田市)の全3工場の生産を停止している。

 疑問に感じるのは火災発生以降、責任者が公の場で一度も説明をしていないことだ。

 今回もホームぺージで生産再開を発表しただけだった。

 発表によると、生産再開に向け、火災・消防の研究者や法律の専門家らを含めた火災事故調査委員会を設置し安全対策に取り組んでいるという。

 総合安全基本方針の策定や安全体制全般を所管する部署等の新設も記載した。

 ほかに改善策として、建屋と設備、避難経路の安全性の確認や夜間勤務を含む全従業員の避難訓練の実施、避難口誘導灯の増強などを列記している。

 しかし、火災・消防の研究者がどんな人なのか、調査委のメンバーや議論の経過も不明だ。識者も「どれだけ“外の目”を入れているのか疑問」と指摘している。

 新設するという安全体制の所管部署もどれくらいの人数を充てるのか、設備の改善は生産再開までにすべて完了するのかなど、分からない点が多い。

 周辺住民や従業員らの不安を払拭するためにも責任者が会見を開き、きちんと説明すべきだ。

 再開に当たっては、安全性が確保されているのか、消防など第三者が加わった入念なチェックは欠かせない。

 火災発生以降、会社側は「遺族への対応を最優先に取り組んできた」としている。

 しかし、工場再開について、複数の遺族が事前に何も説明がなかったと話している。「ホームページでしれっと出すだけなんて信じられない。不信感しかない」など怒りの声もある。

 なぜ遺族に説明しなかったのか。理解に苦しむ。

 花角英世知事は26日の記者会見で「大きな事故を起こした以上、企業としての説明責任は当然ある。遺族、関係者の気持ちに寄り添った対応をするのは当然のことだ」と述べている。

 会社はこれらの言葉を真摯(しんし)に受け止めてほしい。

 亡くなった社員の1人は、祖母と一緒に食べた米菓の味が忘れられず就職したという。三幸製菓の製品のファンは全国にあまたいることだろう。

 こうした人たちから信頼を失うことのないよう、三幸製菓は生産再開の前にしっかりと説明責任を尽くさなくてはならない。