かつてないような広がり方だ。危機感を強めなければならない。手洗いやマスク着用など基本的な感染対策をしっかり行い、インフルエンザの感染拡大を防ぎたい。
厚生労働省は9日、全国約5千の定点医療機関から昨年12月23~29日の1週間に報告されたインフルエンザ患者数が計31万7812人に上り、1医療機関当たり64・39人になったと発表した。
現行の統計を始めた1999年以降、最も多い患者数だ。
本県は38・08人だった。前週の24・39人から1・56倍に増えた。基準の30人を超えたとして県は8日、県内全域にインフルエンザ警報を発令した。
12月30日~1月5日の本県は21・97人に減ったが、年末年始で報告が少なかったためとみられる。流行のピークは例年1~2月で、今後は増える可能性もある。
手洗いやマスク着用のほか、こまめに部屋の換気をする、人混みを避けるといった対策を徹底したい。バランスの取れた食事や十分な睡眠で基礎体力、免疫力を高めることにも努めたい。
心配なのは、感染者に若い人が目立つことだ。県内では19歳以下が全体の7割近くを占めた。本格的な受験シーズンも近い。一層の警戒が必要だ。
高熱やせき、全身の倦怠(けんたい)感などに襲われるインフルエンザは1週間程度で自然に治ることが多いが、子どもや高齢者、基礎疾患のある人は重症化する恐れもある。
患者が増えた要因として新型コロナウイルス感染拡大の影響で数年間、インフルエンザが流行せず、免疫を持つ人が少なくなったことが指摘されている。
新型ウイルスが感染症法上の5類に移行してから1年8カ月となるが、新型ウイルスとインフルエンザの感染対策は共通するものが多い。流行した当時、懸命に取り組んだ行動を思い出したい。
自分がうつらないだけでなく、他人にうつさないよう注意することも忘れてはならない。
懸念されるのは、医療の逼迫(ひっぱく)と治療薬の供給不足だ。深刻な事態に陥ることがないよう、国や県、市町村、業界などは連携し、新型ウイルス時の経験も生かしながら対応してほしい。
インフルエンザだけでなく、最近は新型ウイルスの患者も増加傾向にある。中国では同じ呼吸器感染症のヒトメタニューモウイルス感染症の症例が増えている。
各種の感染症情報にも気を配りながら、油断することなく冬を乗り切りたい。