日本固有種のノジギクは1884年、植物分類の基礎を築いた牧野富太郎博士が発見した。兵庫県姫路市の付近を調べて「日本一の大群落」と評した
▼後に兵庫県の花にもなったノジギクの名を冠した部隊が兵庫県警にある。平仮名書きで「のじぎく隊」という。1995年の阪神大震災を機に結成された。要請を受けると原則、生活安全部の警察官から希望者を募り、被災地に派遣される
▼避難所を回って、防犯を呼びかける。身を寄せている人々の悩みを聞き、相談に乗る。心のケアを担う。現地の警察活動のサポートもする。東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨…。県外の被災地でも大きな役割を果たした
▼こうした取り組みは全国に広がった。新潟県警の「ゆきつばき隊」はのじぎく隊を参考に、2004年の中越地震直後につくられた。中越の被災地では、のじぎく隊の元隊員と共に活動し人々に寄り添った
▼のじぎく隊は能登半島地震の被災地にも何度も赴いた。生活基盤を失い、打ちひしがれた人がいた。周囲とのつながりを絶たれた人もいた。被災1カ月後、活動の様子を報じた神戸新聞の記事が記憶に残る。胸の内を隊員に打ち明けた女性が「一緒に泣いてくれてありがとう」と言葉をかけたという
▼ノジギクは兵庫県版レッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている。6434人が犠牲になった阪神大震災は間もなく発生から30年になる。優しく力強く。のじぎく隊の精神は、絶えることなく受け継がれていく。