冬本番を迎えて雨や雪の日が続き、気の重い朝が多くなった。出勤時は駅やバス停までの道のりを修行のように感じる人は多いだろう。特に積雪が多い地は苦労する
▼豪雪で知られる上越市で暮らすわが身としても空模様が気になる。メタボ予備軍を卒業しようと、マイカーを手放した今冬は一層だ。住まいから高田駅まで約2キロ。戦々恐々と冬を迎えたが、想像したほどの苦労ではない。総延長約13キロで日本一の長さを誇る、高田の雁木(がんぎ)のおかげだ。駅までの3分の2くらいは雁木の下を歩いて行ける
▼雁木は私有地の一部を提供し、建物から張り出した庇(ひさし)だ。1軒だけが設けても、さほどの効果はない。通りに面した各家がそろって取り組むからこそ、積雪時の往来を確保できる
▼上越市は雁木の修繕や新築に補助金を出しているが、原則は個人が建築費も維持費も負担している。見知らぬ人の敷地と軒先を歩かせてもらっているのに「ちょっと失礼」と断る必要もない。雪国の知恵と助け合いがありがたい
▼災害への備えとして「共助」の大切さが指摘される。いざという時に備えて、隣近所とも手を携えることが命を守ることにつながるという考え方だ。目新しいものではない。雪国では雁木のように古くから育まれている
▼今、高田の雁木通りは空き家や空き店舗が目立つ。雁木を使わせてもらっている立場としては残念だ。雪国の助け合いを支えたい…と勝手な理屈を持ち出して、通りの赤ちょうちんで晩酌を楽しんでいるのだが。