「時代」という言葉を辞書で引くと「区切られた、ひとまとまりの長い期間」という説明書きがある。あの災禍は、まさしく区切りの起点となった。30年前の1月17日に発生した阪神大震災である

▼今に続く「災害の時代」の始まりだった。この30年、日本列島では地震や津波、風水害といった自然災害が頻発している。さらには、福島第1原発が暴走したことによる原子力災害にも見舞われた。その度に人々の暮らしが破壊され、多くの涙が流された

▼阪神大震災を「災害の時代」の起点たらしめるものとしては「関連死」という概念が生まれた点も挙げられる。被災ダメージによる「直接死」を免れたとしても、避難生活などのストレスに命を削り落とされる。そんな人が多いことが浮き彫りになった

▼先日の本紙には、関連死が出た災害の一覧表が載っていた。2004年の中越地震や07年の中越沖地震、昨年の能登半島地震など、24もの災害の名がずらりと列挙されていた。それは阪神大震災から30年がたっても、関連死がなくならないことを物語る

▼日本列島は大地震が頻繁に起こる周期のただ中にある。「そう考えて備えることが、我々にとって、時代の課題であろう」。政府の東日本大震災復興構想会議議長も務めた政治学者で、昨年亡くなった五百旗頭(いおきべ)真(まこと)さんが著書「大災害の時代」で述べていた

▼地震を予知することは、なお難しい。発生を防ぐこともできない。今この瞬間も私たちは、そんな災害と隣り合って生きている。

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