〈雨がつづくと仕事もせずに キャベツばかりをかじってた〉。かぐや姫が歌った「赤ちょうちん」の一節だ。天気が悪いと、日雇いの外仕事もないのだろうか。キャベツは懐具合をさほど気にせずとも食べられたようだ
▼作詞の喜多條忠(まこと)さんは妻が魚沼市出身だった縁で、市をPRする「魚沼特使」を務めた。1974年発表のこの曲は安アパートで恋人と暮らした昔を述懐する内容だ。キャベツは、二人のつましい暮らしを象徴する存在として登場する
▼そんな庶民の味方が高騰している。これまでも値上がりはあったが、農水省の調査によると、6~8日の全国平均小売価格は平年の約3・3倍にもなったというから驚いた。1キロ当たり534円で、買うのをためらう人も多いだろう
▼新潟市のスーパーを訪れると、税込みで1玉400~500円ほどの値がついていた。やっぱり高い。一口サイズにカットして袋詰めで売る店もあった。少しでも買いやすくしようと工夫しているらしい
▼昨年12月の低温や雨の少なさが影響しているというが、それにしても…と眉間にしわが寄る。ほかの野菜も天候不順のほか、キャベツの代替品として需要が高まるなどして値を上げている
▼あれもこれもの値上がりの中、なじみの食材の高騰はとりわけ痛い。天候が回復すれば価格も落ち着くとの見方もあるようだ。春が近づくにつれ、値頃感が出てくるだろうか。生でも火を通してもうまい-。あの野菜が早く庶民の味方に戻ってくれますように。