ハァー、佐渡へ佐渡へと草木もなびくよ…。ご存じ「佐渡おけさ」の歌い出しである。人もモノも文化も、黄金を産出する島に吸い寄せられるように集まってくる。そんな情景を歌っているようだ

▼「草木もなびく」は、勢いが盛んなものに全てがなびき従う様子を意味する。勢いというと、超大国トップの座に再び就くトランプ氏のことを思い浮かべる。予定通りなら、この紙面が読者のお手元に届く頃には米大統領に就任している

▼返り咲きを前に、かの国の大企業は「なびく」という言葉がぴったりの振る舞いを見せた。フェイスブックなどを運営するメタは、投稿を第三者がファクトチェックする方式を米国で廃止する姿勢に転じた。投稿内容を巡り対立してきたトランプ氏との関係改善を図ったとみられる

▼ほかの大企業もこぞって接近を試みている。トップらが相次いで会談し、良好な関係を築こうと懸命だ。米紙によると、大統領就任の関連行事には過去最高の2億ドル(約310億円)以上の寄付が集まった

▼そんな風向きを利用するかのように、トランプ氏はデンマーク領グリーンランドの購入や中米パナマ運河の管理権奪還を矢継ぎ早に打ち出した。関税や軍事費負担の強化など同盟国・友好国にも矛先を向ける「どう喝外交」に世界が身構える

▼佐渡おけさには、こんな歌詞もある。〈佐渡は居よいか、住みよいか〉。佐渡が住みよいのは間違いない。では、トランプ氏が君臨する世界は居よいか、住みよいか。さて…。

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