高校生だった35年ほど前、米国中西部のイリノイ州でホームステイしたことがある。片言の英語しか話せずに不安だったが、ホストファミリーは温かかった。英和辞書の単語を指したり、ゆっくり聞き取りやすく話してくれたりした
▼「やさしい日本語」という言葉がある。新聞記事や自治体の防災情報で目にするようになった。30年前の阪神・淡路大震災で外国人に大事な情報が伝わらなかった教訓から、理解しやすい伝え方が求められた。中越地震や東日本大震災の際にも活用された
▼昨年11月の新潟市の広報紙に、特集が載っていた。分かりやすくするこつは「余震」なら「大きい地震の後に来る地震」と 具体的にすること。「『は』っき り」「『さ』いごまで」「『み』 じかく」言うと伝わりやすい「はさみの法則」も紹介した
▼県内に住む外国人は年々増えている。住民基本台帳によると、2024年1月1日現在で2万1145人。14年の1・6倍で、過去最多になった。県人口の1%に当たり、働いている姿も見かける
▼ウイルス禍に伴う行動制限が緩和され、訪日客数は過去最多を更新した。外国人が旅行先で災害に遭うリスクも高まっている。多言語の対応とともに、分かりやすい日本語が大切になる
▼「やさしい」には「易しい」に加え「優しい」の意味も込められている。言い方一つで相手が受ける印象は違う。筆者もホームステイの経験が今でも心に残る。みんながやさしい言葉をかければ、きっと社会は温かくなる。