寒気の流れ込みが来週にかけて続きそうだ。冬だもの。仕方ない。実家の雪下ろしは今季まだ1回で済んでいたけれど、次の段取りを考えねばならないだろうか
▼遠出をしての作業になるので、できれば一度に片付けたい。日ごろデスクワークの身にはこたえるが、なえそうな気持ちを上向かせてくれるものに出合った。雪国新潟が誇る名器と言わせてもらう。十日町市の山田屋商店で製造販売する「クマ武」ステンレススノーダンプである
▼軽くて剛性も高く、取り回しに優れている。雪塊への刺さりも雪離れも良いので作業にリズムが出る。薄い部材で軽量化する一方、先端部にだけ高品質で硬いステンレスを溶接したのがミソだ。完成度の高さは長時間使うほど身にしみる
▼PR広告を担うつもりはない。値段は鉄製ダンプの2~3倍はする。買うには少し躊躇(ちゅうちょ)もしたが、苦役の負担を和らげてくれる道具は他に代えがたい。豪雪地帯で普及していることに納得する
▼元々は地元の鉄工所が試行錯誤を経て特許を得ていた。経営者の樋熊武さんが他界し後継者がいなかったため、40年ほど前に山田屋商店が手づくりの工程を含めてそっくり受け継いだ
▼村山栄治社長(78)は「雪に苦しめられる難儀な暮らしを少しでも楽にしたいと、苦心して研究されたもの」と語る。小さな鉄工所で生まれた道具が時代を経た今も地域で求められ、使われ続けている。頑固で気難しいタイプだったとされる鉄工職人は、商標としてその名を後世に残した。
