「足元が揺らぐ」「足元から崩れる」。寄って立つ基盤が不安定になったり崩壊したりする様子を、こんなふうに言う。多くは比喩的な表現だが現実の脅威を見せつけられたのが埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故だ

▼陥没した地点では土砂崩落がなかなか止まらず、トラックごと転落した運転手の救助は進まない。そうしている間にも、穴はさらに巨大化した。下水道管の破損が原因とみられる。通信インフラなどにも大きな影響が出た

▼地面は暮らしの基盤そのものだ。その上に建物が立ち、人が生活し、車が行き交う。私たちは地震でも来ない限り、地面がそうそう動かないと信じて疑わない。けれど地中では、人々の知らないうちに異変が起きていることがある

▼2016年に福岡市のJR博多駅前に巨大な穴が開いたことを思い出す。規模の大小こそあるが、道路の陥没は多発している。国土交通省によると、22年度には全国で約1万件が発生した。昨年11月には新潟市北区で市道が陥没し、地中の下水管に損傷が見つかった

▼「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という四字熟語がある。足元に気をつけて…すなわち、自分自身や日常生活を直視し反省しようという教えだ。今まさに、かみしめたい言葉といえるだろう

▼道路や橋りょう、水道などのインフラをどう維持するか。そんな課題が指摘されて久しい。技術者不足も壁になっている。人工知能(AI)の活用をはじめ知恵を絞らねば。私たちは、よくよく足元に目を凝らす必要性に迫られている。

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