家族や親戚が集まると食事の支度や配膳は専ら女性が担い、男性はどっかり腰を下ろしたまま。男女の格差を示す典型例として、よく引き合いに出される場面だ
▼「なぜ女性は地方から流出するのか」。そんなテーマで地方出身女性のインタビューを配信している動画チャンネルで、同じような声を聞いた。動画によると、女性は村上市出身で都内在住の20代。地元は時間の流れがゆっくりで「いいところ」と語る一方、男女の役割分担についての意識が根強く、生きづらい面があるとも述べていた
▼東京への一極集中が再び進んでいる。ウイルス禍で一時は緩和されたが、感染拡大前の水準にほぼ戻った。本県では2024年の転出超過が5782人だった。とりわけ若い女性の転出が目立ち、人口減に拍車をかけているようだ
▼「女性が住みたくなる環境や魅力的な仕事があるかが重要だ」。昨年の新潟日報政経懇話会で講演した経営エッセイストの藻谷ゆかりさんは、少子化対策には地元を出た女性が戻ってくるかどうかがカギを握ると訴えていた
▼「旧来の家父長制や男女差別がUターンの妨げになっていると考えられる」とも語った。自分の周辺を見渡してみる。生きづらさや息苦しさを感じさせる要素はないか。残念ながら、思い当たる節はいくつもある
▼石破首相やお役所は盛んに地方創生の旗を振るけれど、行政の施策だけで解決するほど甘くはあるまい。問われているのは、この地で暮らす私たちの意識そのものなのだろう。