登場人物にどんな名前を付けるのか。新聞記者時代に新潟勤務の経験がある作家の堂場瞬一さんが苦労を書いている。主役は覚えやすく、かつ平凡ではないのが最低条件だという

▼本棚を眺めて作者らの名字と名前を組み合わせても、すぐに限界が訪れる。脇役にしても、主役を食ってしまうような目立ったものはいけない。さりとて、あまりに平凡では読み進むうちに忘れられる

▼架空の世界ですら四苦八苦するのだから、生身の子どもの命名はなおさらである。わが子への愛情と幸せな未来への願いを名前に込める。芸能人もかくやのキラキラネームが交じる本紙うぶ声欄の名前を読みながら、名付け親の苦心を思う

▼命名する権利「ネーミングライツ」を得て、企業が施設の名付け親になることも珍しいことではなくなった。財政難にあえぐ自治体や国立大学の導入も相次ぐ。県も所有する公園や県道などのスポンサーを募っている

▼市の施設の命名権を募集している村上市の高橋邦芳市長は、小中学校も対象にすることを示唆した。保護者や子どもの意向を尊重した上で協議するという。学校に企業や商品の名が付いた場合、地域に受け入れられるか、議論を呼びそうだ

▼自治体の懐が潤ったとしても、名前が住民に浸透しなければ命名権の効果は十分とはいえない。市によると、現時点で学校への命名権についての打診はないという。わがまちの施設名は「売れる」のか。担当者には、名付け親とは違った苦労があるのかもしれない。

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