政府が再稼働を推進している東京電力柏崎刈羽原発。原発回帰のエネルギー基本計画を根拠に新潟県への働きかけを強めるとみられる(新潟日報社ヘリから)
政府が再稼働を推進している東京電力柏崎刈羽原発。原発回帰のエネルギー基本計画を根拠に新潟県への働きかけを強めるとみられる(新潟日報社ヘリから)
インタビューに応じる武藤容治経済産業相=2月17日、経産省

東京電力柏崎刈羽原発を巡る議論の在り方について語る花角英世知事=1月29日、県庁

県民投票条例制定に向け、自民党県連幹部と面会する市民団体のメンバーら=2月17日、県議会

原発の透明性を確保する地域の会の定例会=2月5日、柏崎市荒浜1

 武藤容治経済産業相が2月17日、東京・霞が関の経産省で新潟日報社の単独インタビューに応じた。政府は東京電力柏崎刈羽原発新潟県の柏崎市、刈羽村にある原子力発電所で、東京電力が運営する。1号機から7号機まで七つの原子炉がある。最も古い1号機は、1985年に営業運転を始めた。総出力は世界最大級の約821万キロワット。発電された電気は関東方面に送られる。2012年3月に6号機が停止してから、全ての原子炉の停止状態が続いている。東電が原発を再稼働させるには、原子力規制委員会の審査を通る必要がある。7号機は2020年に全ての審査に「合格」したが、安全対策を施している最中で、再稼働していない。6、7号機の再稼働東京電力福島第1原発事故を受け、国は原発の新規制基準をつくり、原子力規制委員会が原発の重大事故対策などを審査する。基準に適合していれば合格証に当たる審査書を決定し、再稼働の条件が整う。法律上の根拠はないが、地元の自治体の同意も再稼働に必要とされる。新潟県、柏崎市、刈羽村は県と立地2市村が「同意」する地元の範囲だとしている。について、新潟県や立地する柏崎市、刈羽村に理解を求め、県内では再稼働に関する議論が続いている。武藤氏は「地元に再稼働の経済的恩恵がないとだめだ」と述べ、国として対応する考えを示した。花角英世知事は自身の判断を示した上で県民の意思を確認するとしており、武藤氏は「材料をそろえながら知事の判断を待たなければいけない」と繰り返した。インタビューを詳報する。(東京支社・小林千剛、報道部・遠藤寛幸)

◆エネルギー基本計画

エネルギー基本計画政府が定める中長期的なエネルギー政策の指針。原発や再生可能エネルギー、火力といった電源ごとの見通しや課題に加え、東京電力福島第1原発事故からの復興方針や鉱物資源の確保など幅広く言及する。民間企業の投資計画に影響を及ぼす。エネルギー政策基本法に基づいて2003年に初めて策定し、おおむね3年ごとに見直す。今回は第7次計画となる。では「原発の最大限活用」を盛り込む一方、「可能な限り原発依存度を低減する」との表現が削除されました。原発回帰の姿勢が鮮明になりました。

 「再生可能エネルギーも原子力も最大限活用する方向性だ。原発回帰という言い方もあるが、電力需要の増加を見越していかなければいけない。原子力は安全を大前提にやってきた。福島事故2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震と津波で、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の6基のうち1~5号機で全交流電源が喪失し、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。1、3、4号機は水素爆発し、大量の放射性物質が放出された。の反省と教訓をひとときも忘れることはない」

 「原子力規制委員会原発推進を担う経済産業省から安全規制の役割を分離させ、原子力規制に関する業務を一元化した組織。東京電力福島第1原発事故を受けて発足した。国家行政組織法3条に基づき、人事や予算を独自に執行できて独立性が高い「三条委員会」として環境省の外局に位置付けられる。衆参両院の同意を得て首相が任命する委員長と委員4人で構成する。新規制基準東京電力福島第1原発事故を教訓に、原子力規制委員会が新たに策定した基準。原子炉などの設計を審査するために用いる。2013年7月8日に施行された。従来の指針などが見直され、炉心溶融や放射性物質の大量放出といった重大な事故への対策や、地震、津波対策を強化した。原発を再稼働させるためには新基準に適合していることが条件となった。審査は原子力規制委員会が行う。新たに建設される原発にも適用されるほか、既存の原発にも適用される。に適合した場合にのみ再稼働を進める方針に変わりない。柏崎刈羽原発は関東の大変な電力の供給源だ。電気料金は東西格差がある。最近の傾向としては、脱炭素電源がないと企業立地も進まない。柏崎刈羽原発の再稼働の重要性は高まっている」

政府が再稼働を推進している東京電力柏崎刈羽原発。原発回帰のエネルギー基本計画を根拠に新潟県への働きかけを強めるとみられる(新潟日報社ヘリから)

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◆再稼働の地元同意

-再稼働は地元同意新規制基準に合格した原発の再稼働は、政府の判断だけでなく、電力会社との間に事故時の通報義務や施設変更の事前了解などを定めた安全協定を結ぶ立地自治体の同意を得ることが事実上の条件となっている。「同意」の意志を表明できる自治体は、原発が所在する道県と市町村に限るのが通例。日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)を巡っては、同意の権限は県と村だけでなく、住民避難計画を策定する30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)内の水戸など5市も対象に加わった。が焦点になります。花角知事は自身の判断を示した上で県民に「信を問う」としていますが、こうしたステップを十分に待ちますか。...

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