燕市の辺りは、かつて「津波目」と記された。「津」は港を表し「目」は中心を意味するから、舟運の拠点だったのだろう。それがどうして鳥のツバメを意味する「燕」の字を当てることになったのか。その経緯はよく分からない

▼その昔、中ノ口川に小さな祠(ほこら)が流れ着き、それを守るように多くのツバメが群れていた-。地元にはこんな伝説も残っている。この地では、古くからツバメは愛される存在だったのかもしれない

▼そんな燕市は「ツバメつながり」で、プロ野球のヤクルトスワローズと交流を続けてきた。その象徴が、ツバメの姿の球団マスコット「つば九郎」だった。市の「つばめ市鳥(長)」や「PR隊鳥(長)」を務め、地域の魅力を発信した

▼声を発しない代わりに、スケッチブックなどにせりふを書き込む「フリップ芸」で人気を集めた。かわいらしい見た目とは裏腹に、ふてぶてしくて毒舌。「つばめ市鳥(長)」に就任した際は、地元産の「つば九郎米」を「せんでんしろ!」と職員に迫った

▼選手と同様、毎オフに球団との契約更改に臨む姿も話題になった。2021年に「フリーエージェント宣言」をした際は、当時の新潟アルビレックスBCや燕市など全国の企業や団体から続々とオファーが届いた

▼そんな人気者が当面、活動を休止する。担当スタッフが亡くなったためという。お疲れさまでした、ありがとう、と言いたい。そして、いつか戻ってきてほしい。燕市民をはじめ、多くのファンが待っている。

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