商売の世界では「○掛け」という言い方をよく使う。「8掛け」と言えば、小売価格のうち仕入れ値の割合が80%のことだ。「8掛けで売る」と言う時は80%の値で、つまり2割引きで売ることになる
▼商売以外の場面でも時々お目にかかる。刑事裁判で裁判官が量刑を決める際は、求刑の「7~8掛け」になることが多いとされてきた。国会でも、重要法案を巡る委員会での審議時間は、参院は衆院の「7~8掛け」が相場と言われることがあった
▼よく似たことが、こんなところにも。食品の賞味期限や消費期限だ。事業者側が客観的な安全性が認められる日数を定めた上で1未満の係数を掛け、実際に表示する日数を短く設定することが可能という。要するに、期限を「○掛け」で表示できるということだ
▼安全性を厳密に確保する狙いだろうか。少しでもトラブルを避けたいという思惑もありそうだ。消費者庁によると係数は0・8以上が目安という。客観的な日数が10日間でも表示は8日間とか9日間にできる
▼ただ期限が必要以上に短いと食品ロスにつながる。まだ食べられるのに、捨てられることも多かっただろう。消費者庁は表示設定のガイドラインを改正する方針だ。係数を設けるなら、1に近づけることが望ましいとする。「○掛け」の表示は減るだろうか
▼わが家ではわずかな期限切れなら、においで大丈夫と判断すれば食べていた。あながち間違いでなかったか。もちろん、大幅に過ぎたものを口にするのは厳禁だが。