つまりは知らないということが怖かったのだ。見えない“敵”におびえた流行初期を思い出す。新型ウイルスの感染が県内で初めて確認されてから、5年になる
▼図書館の本棚を眺めていて気付いた。この5年間になんと多くの感染関連の本が出版されたのかと。感染禍が何を招いたか。何が分かったか。書き記しておくのは大切だ
▼新型ウイルスで亡くなる人のほとんどが高齢者だったことも、無症状でも人にうつしてしまうことも、最初から分かっていたわけではない。「感染者の8割は誰にもうつしていない」という分析も、症例の蓄積から明らかになった
▼免疫学の第一人者である大阪大名誉教授の宮坂昌之さんはワクチンを「自分は当面打たない」としていたが、後に「接種なくして収束はない」と発信するようになった
▼著書で「ワクチンはゼロリスクではない。敬遠する判断は尊重する」と述べつつ、反ワクチン派の言い分に説得力ある根拠がないことを一つ一つ解説している。懸念が言いはやされる新規のレプリコンワクチンを巡っては、その論拠の一つになった海外の論文について「実験データなど証明が全くない。噴飯物に近い」とNHKの番組で語っていた
▼新型ウイルスワクチンには、いまだに一部で懐疑的な見方がある。時間の経過で真偽が証明されたこともあれば、まだまだ不明なこともある。何を信じればいいのか迷ったりもするけれど、頭にも心にもしなやかさを保っておきたい。とても今日的な課題である。