ギリシャ神話に登場するプロメテウスは人間に火を与えたとされる。神々のものだった火を操ることで、人間は高度な文化や技術を発展させていった。人間の歩みは火と共にあったといえる
▼火を操るとは制御するということだ。自在に着火し、炎の強さを調節し、消火する。それができたからこそ、人間は火で煮炊きし、暖を取り、明かりをともすことができた。ものづくりや動力、発電にも生かした
▼ところが、ひとたび制御できなくなると大きな脅威として人間の前に立ちふさがる。岩手県大船渡市で起きた森林火災の様子を見聞きして、改めてそんな思いを強くした。人里離れた場所で大規模な火事が起こると、これほど鎮火が難しいものか
▼山中の現場には消防隊が近づくのも容易ではない。消火用の水を確保するのも困難が伴うだろう。空からの消火活動は天候に大きく左右される。1月に米国ロサンゼルスで起きた森林火災と同様に、大きな被害が生じてしまった
▼きょうから7日までは「全国山火事予防運動」の期間だ。大船渡市をはじめ太平洋側の空気は乾燥が著しく、火災が起きやすい環境になっている。一方、日本海側の本県では林野火災は4、5月に集中する。やはり乾燥や強風の季節だ。雪消えと同時に、そんな時季がやって来る
▼消防庁によると、2023年に起きた林野火災は65%がたき火や野焼きなど人為的な原因による。制御が難しい火は発生させないことが何より肝要だろう。これからの季節、心したい。