2018年6月にカナダで開かれたG7サミットは、貿易摩擦問題などで1期目のトランプ米大統領と欧州の首脳が鋭く対立した。腕組みするトランプ氏を、メルケル独首相はテーブルから身を乗り出すようにしてにらみつけた

▼そんな場面を撮影した写真が世界に配信され話題になったが、今回はそれをはるかに上回る衝撃的なシーンだった。隣国から攻撃を受ける国のリーダーと、その国を支えてきた超大国の指導者が和平交渉を巡って激しい口論を繰り広げた。ウクライナと米国の首脳会談である

▼首脳レベルの会談では、対立点があってもカメラの前では儀礼的に振る舞うのが通例だ。今回はホワイトハウスの大統領執務室に集まった報道陣を前に、両首脳が強い口調で言い争った

▼ウクライナのゼレンスキー大統領も、会談が決裂して米国が支援に後ろ向きになるのは避けたかったはずだ。しかし、トランプ政権のロシア寄りの姿勢に我慢の限界を超えたのか。ロシアは信用できないと主張すると、トランプ氏は激怒した

▼停戦の行方は混迷し、ウクライナはさらに厳しい立場に追い込まれた。他国に軍隊を送り、多くの命を奪う行為は決して許されない。そんな道理とは裏腹に、侵攻を受けた側が窮地に陥る。目の前の現実に暗然となる

▼何度でも言いたい。力による現状変更を許してはならない。東アジアでも同様の事態が起こらないとは言い切れない。欧州各国は、ウクライナ支援を改めて表明した。光を探す努力を続けねば。

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