1837年7月、現在の燕市にあった富永村の水田で草取りをしていた村人は、異様な音に気づいた。ウォーン、ウォーンと、まるで何万匹ものハチの群れがたけり狂っているかのようだった

▼すると大きな水柱が立ち、近くにいた女性は気を失った。隕石(いんせき)の落下だった。今では「米納津(よのうづ)隕石」と呼ばれ、東京・上野の国立科学博物館に展示されている。重量は31・65キロ。国内で確認された中では3番目に重い。褐色の表面は所々が欠けたようになっている

▼世界を見渡せば、さらに巨大な物体が落ちてきた例がある。1908年、現在のロシアのシベリアに50~60メートルもある隕石が落ち、約2千平方キロにわたって樹木がなぎ倒された。「ツングースカ大爆発」の名で知られる

▼2032年に地球に衝突する可能性がある小惑星が見つかったのは昨年12月のこと。米航空宇宙局(NASA)などによると、大きさは40~90メートル。先月6日時点では、衝突確率は1・9%とされた

▼落下すれば広範囲に爆風の被害が及ぶ恐れがあるとして、人工物を衝突させるなどして軌道をずらす「惑星防衛」を取り沙汰する向きもあった。その後の観測で、先月23日には衝突確率が0・004%になり、NASAは「重大な脅威ではなくなった」と発表した。ひとまずは胸をなで下ろす

▼地球への脅威としては、既に私たちは温暖化に直面している。各国が協力して対応せねばならない課題だ。けれど、超大国の指導者が対策に後ろ向きな現状が何とももどかしい。

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