荒天予報なのに運航会社はなぜツアーを実施したのか。あまりにもずさんな安全管理だ。

 観光船は昨年も事故を起こし、国土交通省が会社を監査、行政指導したのに事故が繰り返された。これまでの対応についても検証されなくてはいけない。

 北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船が遭難した事故で、水深120メートルの海底に沈んでいる観光船が29日、6日ぶりに確認された。

 不明者が船内に取り残されている可能性がある。救助、確認を急いでほしい。困難が予想されるが、事故原因を調べるために船体を引き揚げることも大切だ。

 運航会社の社長は事故から5日目の27日、初めて公の場に姿を現し、「私が出航を決めた」などと経緯を説明した。

 出航直前は、高さ3メートル以上の波が予想される波浪注意報が出ていた。多くの漁師は船を出さず、周囲は船長に天候悪化の懸念を忠告してさえいた。

 記者会見で社長は、注意報が出ていると知りつつ出航を決めたとし、「出航後に天候が悪化する可能性がある」と船長から伝えられていたことも明らかにした。

 関係者によると、会社の安全管理規程には運航基準があり、風速8メートル、波の高さ1メートルが予想される場合には、出航を取りやめると規定している。

 社長は、海が荒れれば船長判断で引き返す「条件付き運航」だったと強調している。だが、斉藤鉄夫国交相は「条件付きはあり得ない」と反論する。

 規程は出航判断の基準を具体的な数字で明記しており、運航途中で基準を超える恐れがあれば出航できないと定めているからだ。

 安全軽視の姿勢は疑いようがない。なぜ基準に反して運航させたのか、社長は答えてほしい。

 会社では、荒天が予想されてもツアーを実施することが常態化していた。船長は「行けと言われるから行くんだ」と漏らすこともあったという。

 故障したままの無線装置など安全管理上の対応に疑問も多い。

 安全より利益追求を優先させる経営姿勢はなかったか。過剰なコスト意識は働いていなかったか。きちんと調べることが重要だ。

 観光船は昨年、接触と座礁の事故をそれぞれ起こし、特別監査した北海道運輸局は行政指導で規程の徹底など求めていた。

 今回の事故を受け、国交省は小型旅客船の安全対策を検討する有識者委員会を設置した。規程を順守させる方法や船舶設備の法的規制の強化などを議論し、監査や行政処分の在り方も検証する。

 再発防止に向け、実効性のある対策をどう講じればいいか。一事業者の責任を追及するだけでなく、行政機関のチェック態勢にも目を向ける必要がある。