文化庁が京都市に移転したのは2年前の3月だった。中央省庁で初めて本庁を地方に移転したとうたったが、実際にはかなりの部署が東京に残った。国会対応や他省庁との協議には霞が関に拠点があった方がよいとの判断があったようだ

▼東京一極集中を是正し、災害リスクなどを分散する。そんなメリットを掲げ、省庁や国会といった首都機能の地方移転が検討されたこともあった。しかし議論はなかなか煮詰まらず、すっかり下火になった感がある

▼そんな状況に一石を投じようとしたのか。石破茂首相は今国会の施政方針演説で「防災庁など政府関係機関の地方移転、国内最適立地を推進する」と述べた。防災庁の創設は首相肝いりの政策だ。地方創生の具体例にもなり得るため、力が入っているのだろう

▼2026年度の設置を目指す防災庁については、関西広域連合や石川県などが誘致の動きを見せている。本県も名乗りを上げることになりそうだ。花角英世知事は先日の県議会一般質問で、誘致を検討する考えを示した

▼本県は、地震や風水害、大雪など数々の災害に直面してきた。その経験を生かすとともに、首都直下型地震や南海トラフ地震に備える意味でも、日本海側に誘致することには意義があるだろう

▼「打ち合わせや説明は対面で」といった意識を変える契機にもなりはしないか。災害時には直接会ってやり取りするのが難しい状況もあるはずだ。地方にいた方が役割を果たせる。そんな政府機関がもっとあっていい。

朗読日報抄とは?