県人口が急速に減少し、停滞感が指摘される本県の将来像をどう描くか。国際情勢の影響でエネルギー資源の先行きが不透明になる中で、本県にとって重要な原発再稼働問題をどう捉えるか。

 山積する課題について掘り下げた県民本位の論戦が展開されることを期待したい。

 任期満了に伴う県知事選は12日の告示まで2週間を切り、立候補予定者の顔ぶれや戦いの構図がほぼ固まった。

 これまでに、再選を狙う現職の花角英世氏と、会社役員で新人の片桐奈保美氏が立候補の意向を表明している。

 両氏とも選挙戦の準備を進めており、一部の政策については言及しているが、公約全体を明らかにするのはこれからだ。

 花角氏は初当選した4年前の知事選で掲げた防災・減災対策などに加え、新型コロナウイルス禍以降の成長に向けた社会像の実現を公約に盛り込むとみられる。

 片桐氏は花角氏の原発問題への姿勢に不満があるとしており、本県に立地する東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を認めない立場を前面に打ち出す見通しだ。

 再稼働問題について花角氏は、4年前の知事選で「職を賭して県民の信を問う」と訴えて初当選を果たした。

 判断の材料を得るために、米山隆一前知事が始めた原発の安全性を巡る「三つの検証」を引き継いだものの検証は終わっていない。

 そうした中で今回は、県民に対して何を約束するのか。訴えに耳を傾けなくてはならない。

 県全体を見渡して最も深刻な問題は、歯止めのかからない県人口の減少だろう。人口が減れば経済活動も縮小を余儀なくされ、影響は多方面に深く広がる。

 これまでも県はさまざまな対策を講じているものの決め手を欠いた状態だ。ウイルス禍では東京から地方への回帰が見られたが、本県は流れをつかめていない。

 改善傾向にある県財政を着実に再建させるためにどんな策を講じるか。誰もが安心できる医療提供体制をどう構築するかといったことも具体的に聞きたい。

 選挙では、4年前の知事選と選挙の構図が変わることも注目される。前回知事選では国政与党が花角氏を支持し、野党勢力は結束して対立候補を推したが、今回は野党勢力の足並みが乱れた。

 花角氏サイドに国民民主党県連と、立憲民主党県連の最大の支援団体である連合新潟が加わり、共産、社民両党の県組織は片桐氏を推薦した。立憲は自主投票で、国会議員の一部が片桐氏を推す。

 7月の参院選を見据えた各党の動きが知事選にどう影響するか。

 私たち有権者にとっては県の将来を冷静に見詰める機会になる。よりよいリーダーを選ぶため、さまざまな動きに目を凝らしたい。