県境を越えた統合の検討とは思い切った戦略だ。人口減少など厳しい環境に対応した前向きな計画なのだろう。

 ただ自らの生き残りだけが目的であってはならない。地域の経済、社会に貢献する視点を忘れず、丁寧に検討してもらいたい。

 第四北越銀行(新潟市中央区)を傘下に置く第四北越フィナンシャルグループ(FG、同)が、群馬銀行(前橋市)と「経営統合を含めた経営戦略について検討している」と発表した。

 第四北越銀は本県の、群馬銀は群馬県のトップバンクだ。ともに、地銀10行による連携枠組み「TSUBASA(つばさ)アライアンス」に参加している。

 2021年12月には隣県同士の包括的な業務提携「群馬・第四北越アライアンス」を結び、店舗の共同化など連携を強めてきた。

 預金残高や総資産は第四北越銀がわずかに上回る程度で、ほぼ同じだ。統合が実現すれば、預金量では全国の地銀・地銀グループで4位となる。両行をメインバンクとする企業の合計数は同2位だ。

 驚くのは、新潟市の第四銀と長岡市の北越銀の経営統合から約6年半、合併による第四北越銀の誕生から4年余りしかたっていない中でのもう一段の統合戦略であることだ。しかも今回は、県境をまたいでいる。

 日銀の金融政策見直しによる「金利のある世界」は、銀行経営には追い風となる。実際、第四北越銀、群馬銀ともに直近の決算は高水準の利益を計上している。

 そうした中でも統合検討へ向かう要因に、急速に進む人口減少があるのは間違いない。

 本県の人口は約209万人、群馬県は約188万人だ。両県とも減少しているが、本県の減少スピードは速い。

 地域経済の縮小が懸念される中、一定の経済交流がある隣県同士の地銀が関係を強め、規模拡大効果による収益力の向上、経営基盤の強化を図ろうとの狙いがあるとみられる。

 第四北越FGとしては、首都圏での営業拡大へ足がかりを築く意味合いもあるかもしれない。

 忘れてならないのは、統合が本県の企業や顧客にメリットがあるものでなければならないことだ。

 自らの生き残りのため、取引先企業や利用者にサービス低下などの不利益を強いるようなことはあってはならない。

 「オーバーバンク」といわれるほど金融機関が多くあった本県も破綻や合併により、現在は地銀が2、信用金庫が9、信用組合は8に減っている。

 県内「1強」となった第四北越FGには、県経済に対する責務がより重くなっていることを十分に自覚してほしい。地域を支える企業の育成や起業の支援に一層力を入れてもらいたい。